賃貸事務所を借りるには? 流れや事務所利用の注意点について解説!

近年は働き方が多様化し、テレワークやリモートワークも常態化しつつあります。オフィスの形態もさまざまです。その中で、賃貸事務所を借りるにはどうすればよいのでしょうか。賃貸事務所を借りるまでに必要な手続きや、メリット・デメリット、注意点について、分かりやすく解説します。

賃貸事務所とは

物件を借りる際は、貸主と入居希望者が賃貸契約を結びます。賃貸事務所の場合は、「個人契約」ではなく、事業者が契約者となる「法人契約」を結ぶのが一般的です。賃貸事務所は基本的に場所や部屋だけを借り、入居までに時間がかかるという特徴があります

賃貸事務所を借りるには多くの手続きや提出書類が必要ですが、取引先やクライアントからの信頼が得やすい、利用の自由度が高いといったメリットがあります。

また、賃貸事務所ではなくレンタルオフィスを借りるという選択肢もあります。レンタルオフィスは、賃貸事務所と異なり、賃貸借契約書を締結することなく、月単位のサービス利用契約・施設利用契約を結びます。設備つきであり、多くの場合数日で入居可能です。

賃貸事務所を借りる流れ

賃貸事務所を借りるには、いくつもの手続きを経なければなりません。必要な手続きを押さえて、スムーズに借りましょう。

不動産会社を決める

まずは、賃貸事務所を借りたいエリアを決めましょう。交通の便がいいエリア、人が多く集まるエリアなど、ニーズに合った場所を選ぶとよいです。
エリアが決まったら、不動産会社探しです。賃貸専門の不動産会社には、居住用特化、事務所特化というように得意分野があります。事務所を中心に扱う、借りたいエリアの近くにある不動産会社を探しましょう。
ホームページなどを見て全体の傾向をつかみ、コンタクトをとるとよいです。不動産会社が、ホームページに掲載されていない物件を紹介してくれる場合もあります。
初めて賃貸事務所を契約する場合、不安や不明点が多くあります。知識やノウハウがある担当者に依頼すれば、手続きもスムーズに行えるでしょう。

条件を出す

不動産会社の担当者に借りたい賃貸事務所の条件を提示し、候補となる物件を内覧しましょう。賃貸事務所のエリアと広さを決めて候補を絞り込みます。
事務所の広さは、6平米×働く人数+ミーティングスペースで計算するとよいです。
広さだけでなく、以下の条件にも目を向けましょう。
・トイレ、台所
・共用部分、エントランス
・インターネット環境、電波状況
・電気容量
・駐車場の有無
・非常階段・避難経路
・部屋の臭い、汚れ
・同じビルのテナント状況
・騒音
・日当たり
実際に事務所を借りたと想定し、1日の流れをシミュレーションするとよいです。水回りや共用部分が清潔に保たれているか、部屋の中に煙草の臭いが染みついていないかなどを確かめましょう。多くの機器を使うならば電気容量は重要であり、容量が足りなければ工事が必要です。
駐車場の有無について、ある場合は不便な場所ではないか、ない場合には公共交通手段があるかも調べましょう。同じビルに入居しているテナントの属性が悪いと、事業に悪影響が及ぶ恐れがあります。また、同業種は避けたほうがよいです。周辺の治安も確認しましょう。
騒音は時間帯によって異なるため、何度か時間をずらして下見するとよいかもしれません。
もっとも、すべての条件を満たす物件を見つけるのは困難です。条件の中でも譲れないものを決め、優先順位をつけましょう。
ホームページ掲載の写真と実際の物件は往々にして異なるため、自分の目で確認することが大切です。不明点があれば、すぐに不動産会社に尋ねましょう。

申込と審査

内覧をして入居したいと思ったら、申込をします。入居するには、賃貸事務所の貸主側の審査に通らなければなりません。保証会社の審査、管理会社の審査などを経て、貸主が許可を出します。
申込書に加え、登記簿謄本のコピーや会社の資料などを用意しましょう。

以下に示すのは、審査が通りにくい例です。
・法人設立から間もない
・赤字である・業績が悪い
・資本金が少ない
・業種に問題がある
上記の例では審査を断られるか、もしくは代表者の連帯保証人が必要になり、提出書類が増えます。必要な書類をそろえて、期限までに提出しましょう。

入金・契約締結後に入居をする

審査通過後は、不動産会社の担当者から重要事項説明を受け、契約書などの必要書類に記入します。会社や代表者の登記簿謄本や印鑑証明書、連帯保証人の身分証明書なども提出しましょう。
契約書提出後に、敷金や初回賃料、仲介手数料などを支払えば契約成立です。契約で定めた入居予定日に鍵を受け取った後、入居となります。
手続き完了後は、内装工事などの各種工事、電気やガス・水道などの名義変更を速やかに行いましょう。

賃貸事務所を借りるメリット

賃貸事務所を借りることには、いくつものメリットがあります。

信用を得られる

ビジネスにおいて、社会的信用やクライアントからの信頼はとても重要です。
賃貸事務所を借りるには賃貸契約を結ぶため、退去するにも時間がかかります。レンタルオフィスで手軽に借りる手段もありますが、信頼を得にくい面があります。自宅をオフィスにする場合も同様に信用されにくく、小さな会社であるという印象を抱かれやすいようです。
取引先やクライアントは、月ごとに契約可能なレンタルオフィスよりも、賃貸契約をして継続的に事業をする構えの賃貸事務所のほうが、「しっかりした会社である」というイメージを抱くでしょう。

来客対応ができる

レンタルオフィスなどでは、他のテナントに遠慮して来客を呼びにくい状況が生じます。賃貸事務所は、日程を気にせずにクライアントに対応可能です。急な来客にも慌てずに応じられるでしょう。
さらに、レンタルオフィスでは、フロア内でパーテーションなどでスペースを区切っている場合もあり、クライアントと話し合った内容が漏れる恐れがあります。貸会議室などを借りればプライバシーは守られますが、事前に部屋を予約しなければなりません。

賃貸事務所では内部に来客用のスペースを設けられるため、話が外部に漏れる心配はなく、安心して機密事項を話せます。

プライベートと仕事を分けられる

さらに、賃貸事務所ではプライベートと仕事をする空間をしっかり分けられる、というメリットもあります。
自宅をオフィスにした場合、プライベートと仕事の区切りが難しくなります。賃貸事務所を借りれば、仕事は事務所で行うため、公私の区別をつけやすくなります。労働時間も明確であり、オンオフの切り替えをしやすいでしょう。自宅でしっかりとリラックスできると、仕事にも集中しやすくなります。

賃貸事務所を借りるデメリット

さまざまなメリットがある賃貸事務所ですが、デメリットも存在します。デメリットを理解し、どのようにして改善すべきか対策を整えましょう。

初期費用がかかる

賃貸事務所を借りるには、初期費用が必要です。居住用の賃貸を借りる場合よりも高額です。

一般的に、以下の初期費用がかかることを押さえましょう。
・敷金(保証金): 賃料の6か月分~12か月分
・礼金(不要な場合もあり): 賃料の1か月分~2か月分
・仲介手数料: 賃料1か月分+消費税まで
・保証会社への保証料
・火災保険料
事務所の賃料は坪単価に基づいて計算されます。人気があるエリアや、都市中心部にある事務所の坪単価は高いため、賃料も高額になります。

上記の例以外にも、

・初回に支払う賃料
・引っ越し代
・内装工事代
・什器代
などの費用が必要です。事務所の仕様・規模にもよりますが、内装工事は高額になる場合が多く、数百万円単位の初期費用がかかることも多々あります。
物件によって上記項目や金額は変わりますが、事前に計算して予算と照合するとよいです。

契約までに時間がかかる

賃貸事務所を借りるには、一般的に以下のプロセスが必要です。

・不動産会社決定
・条件決定、物件探し
・内覧
・入居申込
・審査
・入金
・契約
・内装工事
・引っ越し
各プロセスがスムーズに進んだとしても、入居までに1か月程度はかかるでしょう。条件により、審査が不要の場合もあります。複数の不動産会社・物件を比較する場合には、より長い時間がかかります。内装工事の業者やデザインを決めるには、時間をかけてしっかり検討することが必要です。余裕をもってスケジュールを組みましょう。

維持費がかかる

初期費用だけでなく、賃貸事務所で事業を続けるには維持費が必要です。維持費の例を以下に示します。


・賃料(消費税含む)
・共益・管理費
・駐車場代
・水道光熱費
・通信費
・リース代
住居を借りても基本的に消費税はかかりませんが、賃貸事務所では賃料に消費税が課されるので要注意です。ホームページなどに記載されている金額が消費税込みなのか、事前に確認しましょう。
社員の人数に伴い駐車場代もかかりますし、コピー機などのリース代も払わなければなりません。機器の故障などの不測の事態が生じると出費も増えます。
毎月の維持費を十分に払えるかを計算したうえで、条件に合った賃貸事務所を探しましょう。

賃貸事務所を借りるときの注意点

賃貸事務所を借りるときには、どのような点に注意すればよいのかを紹介します。3つのポイントを押さえましょう。

用意する書類が多い

賃貸契約を結ぶ際には、一般的に以下の書類が必要です。必要な書類の種類は、貸事務所の貸主や自社の状態によっても異なります。大手企業の場合、決算書などの書類が不要になることがあります。
・会社の登記簿謄本
・会社概要・案内(パンフレットなど)
・会社(代表者)の印鑑証明書および実印
・連帯保証人の印鑑証明書および実印
・代表者の身分証明書
・連帯保証人の身分証明書など
・2~3期分の決算書(貸借対照表・損益計算書)

事業を立ち上げるために事務所を借りる場合、決算書をはじめとし、事業内容が分かる書類などがありません。審査する側にとって判断材料が足りないため、事業計画書を求められることがあります。
信頼に足りると判断してもらえるように、事業内容や代表者の経歴について具体的に記載しましょう。

敷金の全額返金が難しい

敷金は物件を借りる際に貸主に対して支払い、契約終了時に返却されるお金です。賃料滞納などの事態に備えて貸主が「預かる」お金であり、賃貸事務所では住居用賃貸よりも高く設定されていますが全額が返却されるわけではありません。一部を償却として返還しなかったり、原状回復の費用に使われるためです。


敷金の償却とは、契約時に設けられた特約により一部を返還しないとし、退去時に敷金から引かれる費用を指します。一般的に、賃料の1~2か月分、保証金の10~20%程度が相場です。


原状回復工事の費用については、事務所の広さや特約での取り決めにより異なります。工事業者は貸主が指定する場合が多いですが、提示金額が適正か、複数見積もりをとって比較するとよいでしょう。
償却や原状回復の金額などにおける取り決めは、特約として設けられているため、契約時にしっかり確認・把握することが大切です。

什器をそろえる必要がある

賃貸事務所では、内装や設備に加えて什器(家具)をそろえる必要があります。
什器には以下のようなものがあります。

・オフィスデスク・チェア
・応接用家具
・収納棚
・金庫
什器の新規購入の相場は社員1人あたり10万円から、内装工事費の相場は1坪あたり20~40万円程度を見積もるとよいです。
レンタルを利用したり、今まで使っていた什器を使いまわしたりすれば、什器にかかる費用は抑えられます。

居抜き・セットアップオフィスという方法もある

少しでも費用を抑えたい、予算が足りないといった場合は「居抜き」「セットアップオフィス」を選択肢に入れましょう。
居抜きとは、事務所や店舗などで、前のテナントが使っていた設備や内装などをそのままにして次のテナントが使用することを指します。
セットアップオフィスとは、事務所や店舗の貸主が内装や設備などをあらかじめ用意する形式の事務所です。

居抜き・セットアップオフィスのメリット

居抜き物件・セットアップオフィスには、以下のメリットがあります。
・初期費用を抑えられる
・内装工事などの手間がかからない
・早く事業を始められる

入居前の内装工事は、業者を決め、内装案を選ぶなど、費用面だけでなく労力も必要です。内装工事が不要になれば、時間や手間、費用の面で大きく助かるでしょう。すぐに事業を始められますし、営業開始日も早められるかもしれません。
しかし、事前に内装や設備が決められているため、自由にカスタマイズできず、使いにくく感じる場合があります。居抜き物件の場合は設備や内装、家具がすべて中古であるため、故障の恐れもあるでしょう。

また、セットアップオフィスの場合、普通の賃貸事務所よりも賃料は高めです。これは、内装工事費や設備代が賃料に上乗せされるためです。高めの賃料を長期間払い続けても問題はないか、改めて見直しましょう。
居抜き物件やセットアップオフィスは、初期費用をなるべく抑えたい、すぐに事業を始めたい場合に適しているでしょう。

賃貸事務所は借りる手間やコストがかかりますが、信頼を得やすく堅実なビジネスの場として使えます。注意点を踏まえてデメリットを減らし、改善するための工夫をすることで、安定した快適な事業環境を整えましょう。

まとめ

賃貸事務所を借りるには法人契約が必要です。賃貸事務所は、不動産会社を決め、条件を整えたうえで申込と審査、入金・契約締結をして借りられます。
賃貸事務所を借りることで信用の獲得や来客対応が容易になったり、公私の区別もつけやすくなったりします。一方、初期費用・維持費に加えて契約までの時間がかかる点への理解が必要です。
コストを抑えたければ、居抜き物件やセットアップオフィスを借りることをおすすめします。セットアップオフィスを利用して、賃貸事務所を契約しましょう。