働きやすい職場とは? オフィス環境に注目した職場づくりのポイント
企業が持続的に発展していくためには、人的資源のパフォーマンスを最大化する仕組みが欠かせません。そこで重要となるのが、社員が働きやすいと感じる職場環境の構築です。本記事では、働きやすい職場環境をメインテーマとして、その特徴や押さえるべきポイントなどについて解説します。
働きやすいと言われる職場に共通する4つの特徴
現代の企業経営には「人的資源」「物的資源」「資金」「情報」「ファシリティ」などの経営資源が不可欠であり、なかでも最も基本的な経営課題となるのが人的資源の戦略的な活用です。そして、人的資源の労働生産性を最大化するためには、社員にとって働きやすい職場環境の整備が欠かせません。では、「働きやすい職場」とは、具体的にどのような環境を指すのでしょうか。一般的に働きやすいとされる職場環境には、以下に挙げる4つの特徴があります。
・良好な人間関係を築けている
・残業が少なく業務体制に無理がない
・コンプライアンスを徹底している
・ライフステージに応じた働き方に理解がある
1. 良好な人間関係を築けている
社員が働きやすいと感じる職場環境の特徴において、非常に重要度の高い要素といえるのが「良好な人間関係」です。一般論として職場に個人的な感情を持ち込むのは好ましくないとされますが、じつは組織内の人間関係と社員の労働生産性には深い相関関係があります。それを証明する根拠のひとつとして挙げられるのが、1924年にアメリカのシカゴ郊外にあるウェスタン・エレクトリック社で行われた「ホーソン実験」です。
ホーソン実験とは、生産性向上の要因を発見するための実験であり、さまざまな仮説と検証を繰り返した結果、組織内の人間関係が労働生産性に多大な影響を及ぼすことが判明しました。職場内の人間関係が険悪だったり、あまりにも厳格な上下関係が存在したりする場合、社員に過度な精神的負荷が生じてしまい、労働生産性の低下を招く要因となります。したがって、社員が働きやすいと感じる職場環境を構築するためには、人間関係を良好に保つ組織風土や企業文化の醸成が必要です。
2. 残業が少なく業務体制に無理がない
日本は古くから滅私奉公の精神を美徳とする傾向にあり、サービス残業や長時間労働を「努力」と捉える人が少なくありません。しかし、適切な賃金が発生しない時間外労働や、法定労働時間を超える過度な労働は従業員の権利侵害にあたり、本来あってはならないことです。ところが、日本は世界的に見ても長時間労働の割合が高く、厚生労働省の調査(※1)では、一週間の労働時間が49時間を超える労働者数はアメリカ15.7%、イギリス11.4%、フランス10.1%、ドイツ7.7%であるのに対し、日本は18.3%と非常に高い値となっています。
このような背景から、近年では違法な残業制度や過重労働が社会問題となっており、2019年に「働き方改革関連法」が施行されたことで、企業では労働環境の抜本的な変革が求められています。あまりにも業務負荷の高い仕事を与えられたり、過度な残業が常態化していたりすると、社員のモチベーション向上は望めません。新しい時代に即した組織体制を構築するためには、業務体制に無理のない労働環境を整備する必要があります。
(※1)参照元:令和元年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/20/dl/20-1.pdf)
3. コンプライアンスを徹底している
社員が働きやすい職場環境を整備する上で必須となるのが、コンプライアンスへの取り組みを重視する組織風土と企業文化の醸成です。コンプライアンスは「法令遵守」と和訳される概念であり、企業経営の領域では法律や政令を遵守するのはもちろん、組織が定める社内規定や就業規則といったルールを守ることを意味します。近年、粉飾決算や不正会計、個人情報流出、ハラスメントなどの不祥事が話題になる機会が多く、企業では社会規範及び企業倫理に則った事業活動が求められています。
企業の存在意義とは、事業の発展と組織の成長を通じて地域社会に貢献することであり、そのためにはコンプライアンスへの取り組みが欠かせません。コンプライアンスを遵守する組織体制は健全なビジネスを行っているあかしでもあり、違法なサービス残業や過重労働などを回避するためにも、倫理や規範を重視する組織風土と企業文化の醸成が不可欠です。また、コンプライアンスの徹底により、組織に属する社員のエンゲージメントやロイヤルティの向上に寄与し、経営基盤の総合的な強化につながります。
4. ライフステージに応じた働き方に理解がある
近年、働き方改革が推進される背景には、サービス残業や長時間労働を是正するほかに、多様なワークスタイルに対応するためという理由が挙げられます。総務省統計局の調査によると、国内の総人口は2008年を頂点として減少し続けているのが実情です。このような社会的背景のなかで日本が持続的に成長していくためには、育児や介護、難病などの複雑な事情を抱える人々が活躍できる社会を実現しなくてはなりません。
そして、そうした社会を実現するためには、企業が人材のライフステージに応じた雇用を創出する柔軟な組織体制が求められます。また、出産や育児、介護などは働き方に大きな影響を与えるため、入社前に休暇制度の充実度や有給の取りやすさなどを確認する人も少なくありません。人材不足が加速していく現代社会において、優れた人材を確保するためにも多様な働き方に対応できる仕組みの整備が求められます。
働きやすい職場だと感じてもらうためのポイント
組織に属する社員に働きやすい職場と感じてもらうためには、重要なポイントがいくつか存在します。なかでも重要となるのが「ワークライフバランス」と「人事評価制度」、そして「オフィス環境」の3つです。
ワークライフバランスに配慮する
働きやすい職場環境を構築するためには、ワークライフバランスへの配慮が欠かせません。先述したように、近年の国内では違法な残業制度や長時間労働の常態化が深刻な社会問題となっています。たとえば、過去に発生した大手広告代理店社員の過労自死事件はマスメディアでも大々的に取り上げられ、長時間労働やハラスメントといった労働環境におけるさまざまな問題が顕在化しました。
このような背景も相まって働き方改革が推進されており、企業では仕事と生活の調和を図る労働環境の整備が重要な経営課題となっています。従業員のライフステージによって仕事と生活のバランスの比重が異なるため、働きやすい職場を整備するためにはワークライフバランスを考慮した組織体制を構築しなくてはなりません。福利厚生や育児支援などの充実を推進し、仕事と生活に調和をもたらすことで従業員の労働意欲や貢献意識の向上につながります。
評価制度の見直しを行う
人的資源の運用成果を高めるために欠かせない施策のひとつが、人事評価制度の見直しです。人材のパフォーマンスを最大化するためには、業績への貢献度や労働意欲、能力、協調性などを客観的な視点から適切に評価しなくてはなりません。公正かつ公平な人事評価制度を整備できれば社員のモチベーション向上に寄与し、ひいては組織力の総合的な強化につながります。反対に社員が適切な評価を受けていないと感じた場合、労働意欲や貢献意識の低下が懸念されます。
もちろん、適切な人事評価制度の確立は容易な課題ではありません。たとえば、年功序列のような旧態依然とした組織構造は、優秀な若手社員の不満を募らせる要因となりかねず、かといって成果主義に傾きすぎれば社内競争の激化や、コミュニケーションの希薄化を招く可能性があります。企業が持続的に発展するためには社員のパフォーマンスを最大化する仕組みが不可欠となるため、いかにして自社の組織体制や事業形態に最適化された人事評価制度を確立するかが重要なポイントです。
オフィス環境を整備する
従業員の労働生産性を高めるためにはオフィス環境の整備が不可欠であり、その際に重要なとなるのが「健康経営オフィス」という概念です。健康経営オフィスとは、社員の健康を保持・増進することを目的とするオフィス空間を指します。たとえば、AIやIoTなどのインテリジェントな技術を活用したスマートオフィスの構築により、施設内の各種データを自律的に収集し、空調や照明などを自動的に快適な状態へと制御可能です。
こうしたオフィス環境を整備できれば、室内の温度や湿度、照明などを労働生産性の高い状態に制御し、業務の効率化を促進するとともに省エネルギー化にも寄与します。実際に経済産業省が行った調査(※2)によると、健康経営オフィスの推進により、運動器・感覚器の障害やメンタルヘルスの不調などの改善に貢献することがわかっています。また、健康経営オフィスの推進は社員エンゲージメントの向上につながるため、離職率や定着率の改善に寄与する点も大きなメリットです。
(※2)健康経営オフィスレポート|経済産業省(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf)
働きやすいオフィス環境は生産性向上にもつながる
事業領域における「生産性」とは、ヒト・モノ・カネといった経営リソースの投入量に対し、獲得した産出量の比率を表す指標です。生産性を表す数式は「生産性=産出量÷投入量」となり、「投入量」の値に労働者数や労働時間を代入することによって、社員一人あたりの成果を表す「労働生産性」を算出できます。つまり、労働生産性の基本的な数式は「労働生産性=産出量÷労働投入量(労働者数×労働時間)」となります。
労働生産性を高めるためには、いかにして人材のパフォーマンスを高めるかが重要な課題です。たとえば、健康経営オフィスやスマートオフィスの推進により、社員が働きやすい環境を整備できれば、既存業務の能率化や業務連携の強化、社内コミュニケーションの活性化といったメリットを享受できます。そして労働生産性が高まることで、より少ない労働投入量で従来と同等の成果を創出する、あるいは従来と同じ労働投入量でより大きな成果を生み出せるため、結果として組織全体における生産性向上につながります。
オフィス環境を整備する際のポイント
オフィス環境を整備する際に押さえるべきポイントとして、以下の4つが挙げられます。
・社員の意見を反映する
・セキュリティ対策を踏まえた設計にする
・安全性に考慮した設計にする
・オフィスイメージに合わせた配色を意識する
社員の意見を反映する
組織を牽引するのは経営層ですが、直接的な付加価値を生み出すのは現場で働く社員です。したがって、オフィス環境を整備する際はトップダウンでプロジェクトを進めるのではなく、社員の意見や意向に耳を傾ける必要があります。たとえば、レイアウトや装飾などを設計する際に社員の意見を取り入れることで、既存業務に最適化された導線を設計できるのはもちろん、オフィスデザインに携わることによる一体感や満足感を醸成する一助となります。
セキュリティ対策を踏まえた設計にする
組織のオフィスには社員の個人情報や製品開発情報、経理文書などの機密データが保管されています。情報漏洩インシデントは企業の社会的信用の失墜を招き、最悪の場合は事業停止にまで陥る可能性も否定できません。そのため、オフィス環境を整備する際は、社員の快適性や業務プロセスの効率化を考慮するのも大切ですが、セキュリティの強度も非常に重要な課題です。また、部門やスペースによって必要なセキュリティレベルが異なるため、自社の組織体制に適したセキュリティを設計する必要があります。
安全性を考慮した設計にする
オフィスデザインを設計する上で、最も重要な要素といっても過言ではないのが安全性です。企業はオフィスで働く社員を事故や事件などから守る義務があり、安全性を考慮した労働環境を整備しなくてはなりません。また、日本は地震大国と呼ばれる国であり、自助努力ではどうしようもできない突発的な災害に見舞われる可能性があります。そのため、災害時に安全に避難できるか、あるいは避難口がきちんと確保されているかといった点を考慮し、万が一の事態に対応できるオフィスデザインを設計することが大切です。
オフィスイメージに合わせた配色を意識する
配色や基調となる色によってオフィスのイメージは大きく左右されるため、カラーコーディネートへの取り組みは非常に重要です。たとえば、コーポレートカラーが青色の企業であれば、オフィス家具やオフィス内装にブルーを意識的に取り入れることで、ブランドイメージとの統一感が生まれます。また、色彩心理学を参考にしつつ、企業イメージに合わせた配色を意識することで、より良い職場環境の構築やモチベーションの向上につながります。
働きやすい職場を目指すなら居抜き・セットアップオフィスもおすすめ
オフィス環境の見直しを推進する上で、無視できない重要課題として挙げられるのがコストです。既存のオフィス環境を変革するためには相応のコストを要するため、居抜き物件やセットアップオフィスを選択する方法もあります。居抜き物件は前の賃借人が使用していた設備や内装を残した物件を指し、オフィスの改装費用を大幅に抑えられる点が大きなメリットです。
一方でセットアップオフィスとは、賃貸人があらかじめ内装工事を施し、テナントに貸し出す形態の物件を指します。すでに内装工事が施されているため、居抜き物件と同様にイニシャルコストを大幅に削減できる点が大きなメリットです。特に、セットアップオフィスはデザイン性に優れる物件が多く、企業のイメージや社員のモチベーション向上につながりやすいというメリットもあります。
企業を発展させるためには、社員がパフォーマンスを最大限に発揮することが重要です。働きやすいオフィス環境を構築できると、社員のモチベーションと生産性の向上を図れます。押さえるべきポイントを把握して、良好なオフィス環境を整えてください。
まとめ
企業にとって重要な経営課題のひとつは生産性の向上であり、そのためには社員のパフォーマンスを最大化する仕組みを整備しなくてはなりません。社員が働きやすいと感じる職場は人間関係が良好で健全な労働環境が整備され、さらにはコンプライアンスの徹底やライフステージに応じた働き方に理解があるといった特徴があります。このようなポイントを踏まえつつ、既存の業務プロセスを効率化するオフィスデザインを設計できれば、組織全体における生産性の向上が期待できます。オフィス環境の再整備を目的として、居抜き・セットアップオフィスの活用を検討している方は、居抜き・セットアップオフィスを専門で扱うValue Officeを利用されてみてはいかがでしょうか。