オフィスの移転費用はどのくらい? 相場や注意点、費用を抑える方法も紹介
オフィス移転を検討されている経営者の方にとって、一番懸念されるポイントは「移転費用」ではないでしょうか。本記事では、オフィス移転にかかる費用の相場や移転時の注意点のほか、内装付きの「居抜きオフィス」「セットアップオフィス」と、内装無しの「通常のオフィス」とを比較して、より移転費用を安く抑える方法をご提案します。
オフィスの移転にかかる費用の種類とは?
事務所・オフィスの移転の費用は、住宅用賃貸の転居とは異なり、オフィスの面積や従業員数・賃貸契約の内容によって大きく額に差が出ます。
また、オフィス移転には「退去費用」と「入居費用」の2種類の費用がかかりますが、内訳がそれぞれ異なるため、見積の際はその内容を詳しく確認する必要があります。
現オフィスからの退去時にかかる費用の相場
現オフィスの退去時には、大きく分けて「引っ越し費用」「不用品・廃棄物処理費用」「原状回復工事費用」の3種の費用が必要です。
引っ越し費用
まず、オフィスの引っ越し費用ですが、その額は社員1人当たりで計算されます。
相場はおおよそ2~5万円ですが、事務所の立地条件および引っ越し作業の環境によって変動が大きくなるので注意が必要です。
また、年度末・年度初めの引っ越しシーズン(2~4月)では必要な人員が不足することから、相場価格が通常の1.5倍に上がることがほとんどです。
ほかにも、オフィスのフロアが2階以上にある場合、荷物用エレベーターの有無もチェックしなければなりません。
もし専用エレベーターがない場合は作業スタッフの負担が大きくなるため、その分費用も割増です。階段や専用エレベーターで搬出できない大きな荷物がある場合、クレーンで荷物を運搬する必要が出てくるため、さらに追加費用が必要となるでしょう。
不用品・廃棄物処理費用
オフィス移転の際は、使用していないOA機器や事務用品・老朽化が進んだ事務所の家具・倉庫に積まれた使途不明の備品など、多くの不用品やゴミが発生します。不用品には産業廃棄物として業者に処理を依頼するものと、リサイクル品として業者に買取してもらえるものに分かれるため、どの品目を廃棄物として処理するかを整理しておきましょう。特にオフィスを縮小して移転する場合は、どうしても不用品廃棄が増えるので、念入りに選別してください。
産業廃棄物処理業者に運搬・廃棄を依頼する場合、トラックの容量で費用を確認しましょう。
相場価格は2トントラック1台で約7~8万円、4トントラック1台で約10~15万円です。
原状回復工事費用
オフィス移転時には、オフィスを入居前の状態に復元する「原状回復工事費用」も必要です。壁・天井・床にある傷の修繕や汚れのクリーニングはもちろん、パーテーションがあれば撤去しなければなりません。賃貸物件は退去時の原状回復義務があり、住宅用物件の経年劣化は原状回復の対象となりませんが、オフィスの場合は原則原状回復が義務となり、入居時の賃貸契約で負担割合を定めるのが通例です。
また、原状回復費用はオフィスの利用状況や工事業者によって大きく額が異なります。工事業者の選定はビルの持ち主や契約書の内容にもよりますが、ほとんどの場合ビルが指定する業者に依頼することになるでしょう。費用の目安として50坪までの小・中規模オフィスは坪当たり3~8万円、50坪以上の大規模オフィスは坪当たり10~20万円で、空調設備の工事が個別に発生した場合は坪当たり20万円かかるケースもあります。
新オフィスへの入居時にかかる費用の相場
新しいオフィスに入居する際の費用には、「前家賃」「敷金」「礼金」「保証委託金」「内装・設備・通信工事費用」などがあります。
新オフィスの費用
賃貸物件では、移転する当月分の家賃を「前賃料」として支払う必要があります。
多くの場合1か月分が家賃が必要ですが、入居する時期によっては翌月分も合わせて2か月分を請求されるケースもあります。支払う家賃の額は契約書に条件として明記されているので、必ず目を通しましょう。
敷金
「敷金」は、家賃滞納や退去時の原状回復が起こったときに備え、オフィスビルの管理人に預ける保証金のことです。
敷金は家賃の滞納などがなければ、通常は退去する際に返金されます。費用の相場は50坪未満の小中サイズのオフィスで家賃3~6か月分、50坪以上の大型オフィスは家賃6~12か月分です。金額は管理人が個人か法人かによっても変動しますが、一般的に家賃の3、6、12か月分の敷金が提示されることがほとんどです。また、契約書に別途「償却〜〜か月」と明記されている場合、退去する際にその分の敷金は返却されないことに注意してください。
礼金
「礼金」はオフィスが入居するビルのオーナーに支払う一時金です。敷金と混同されがちですが、あくまで管理人にお礼の意味を込めて支払うお金なので、敷金と違って返還されません。礼金は主に個人のビルオーナーの場合に支払う例が多く、不動産会社が管理するオフィスビルや大型ビルでは礼金は発生しないことが多いです。また、礼金の額は契約内容によって様々です。オフィスの面積が50坪の中規模ビルだと、敷金と同額の家賃数か月分がかかるケースもあります。一般的には小・中規模ビルの場合、家賃1~3か月をおよその目安にしておくと良いでしょう。
保証委託金
設立したばかりの会社で賃貸の保証人がいない、ビルの管理人の方針など様々な理由によって賃貸契約を保証会社を通じて行うこともありますが、その際に支払うのが「保証委託金」です。保証委託金の計算方法は保証会社によってもちろん異なりますが、「家賃〜〜か月分」「契約期間の家賃合計額の〜〜%」であることがほとんどです。保証会社は賃貸契約の借主が選べないことが多いので、契約を締結する前に必ず確認しましょう。
仲介手数料
オフィスの物件探しを不動産会社に依頼した場合は、不動産会社に仲介手数料を支払います。
入居先ビルを仲介してもらった借主は、一般的に家賃の1か月分を仲介手数料として支払うケースが多いです。
火災保険料
オフィスの借主は火災保険の加入が一般的であり「火災保険料」の支払いが発生します。
火災保険の補償は一般的に火災にとどまらず、オフィス機器の損傷のほか、水漏れにより下層階に損害が出た場合の補償も対象範囲です。
契約内容で補償の対象範囲が変わるため、こちらも入念に確認してください。保険料は2年契約で2~3万円を目安にすると良いでしょう。
内装・設備・通信工事費用
これまでは事務手続きに必要な費用について説明しましたが、新しいオフィスに移転する際はそれら手続きに必要な費用のほか、内装や空調などの設備の工事費用や、電話やネットワークなどの通信工事費用がかかることも忘れてはいけません。
オフィスのレイアウトや内装工事では主にパーテーションや壁紙・カーペットの設置などを行いますが、最近ではオフィスの壁を全面ガラスにしたり、作り付けカウンターを設置したりするなど、おしゃれで凝ったデザインのオフィスも増えてきました。
もちろんデザインの要望が多いほどかかる費用も高額になるので、新オフィスでどこまでデザインや機能性にこだわりたいか、事前に充分に検討しましょう。また、内装工事によっては避難経路を確認するための安全設計費用がかかる場合もあるので注意してください。内装工事の目安はオフィスの坪当たり10~30万円が目安です。
それから、電話やLANを配線する通信工事費用もオフィスの広さや工事内容によって変動します。
セキュリティを強化したり、巨大なサーバーを設置したりする場合は、それだけ費用が高額になりますが、通信工事費用はおおよそ坪当たり10~15万円であることがほとんどです。
また、ビルのほかの入居者への影響を考慮して夜間工事にする場合は、施工費が高くなることがあるので注意してください。さらに、それぞれの工事を専門業者に分けて依頼すると、工事進捗を管理する費用が発生するケースがあるため、工事依頼は一括で任せることをおすすめします。
オフィス移転時の注意点
オフィス移転の費用はオフィスの広さや社員数が大きいほど高額になるため、場合によっては数千万円単位の費用がかかることも珍しくありません。
一大プロジェクトであるオフィス移転を成功させるために、注意点を抑えておきましょう。
スケジュールに余裕を持つ
オフィス移転のプロジェクトでは、同時並行で進めなければならない作業が多数あるため、シンプルに膨大な労力と時間がかかります。
スムーズに移転作業を進めるためには、余裕を持ったスケジュールで詳細な計画を立て、時系列に必要なタスクを列挙し実行しなければなりません。
オフィス移転はおおまかに、移転スケジュールの立案〜賃貸物件探し〜契約手続き〜新しいオフィスの内装工事〜移転の各種手続き〜引っ越し作業の順で行います。フローの中で必要なタスクをできるだけ細分化し、余裕を持って進めていきましょう。
6か月前までに解約予告を行う
住宅用賃貸の引っ越しとは異なり、オフィス移転の場合はかなり前もってビルのオーナーや管理会社に、契約解除の予告をしておく必要があります。一般的には解約希望日の6か月前までに予告を行います。解約予告期間は管理会社などで異なるため、入居する際に交わした賃貸契約書を確認するようにしましょう。
解約予告期間を確認せず、期間内に中途解約をしてしまうと、解約日までの家賃や違約金を請求されることがあるので注意してください。また、解約予告の際は原状回復の内容や負担条件、テナントの債務を担保するため、ビルのオーナーに無利子で託していた預託金の返却条件、ほかの特約条項などを確認します。
移転費用を抑える方法
オフィス移転費用の種類は多いので、注意しないと想定より高額になってしまいます。移転費用を抑えるにはまず、移行期間に発生する賃料の二重払いをなるべく防がなければなりません。
フリーレントでの契約
フリーレントはオフィスを賃貸する際に、一定期間賃料を無料にできる契約システムです。新しいオフィスに移行するまでの期間は、新旧のオフィスで賃料が重複してしまいますが、新しいオフィスをフリーレントで契約できれば、賃料は現在のオフィスのみで節約できます。貸主からすると一定期間賃料収入がゼロになりますが、賃料を下げずにテナント入居者を呼び込めるメリットがあります。フリーレント付きと明記されていなくても、貸主と交渉することは可能です。注意点としては途中解約の違約金を高めに設定しているケースがあるので、事前に契約期間の確認が必要です。
セットアップオフィス(内装付きオフィス)の契約
セットアップオフィス(内装付きオフィス)は受付や会議室、応接室などオフィス向けの内装や間取りが入居前から用意された賃貸事務所のことです。通常の賃貸事務所物件は、原状回復を済ませているので、事務所に何も残っていない状態です。自社のスタイルに合わせて内装デザインや設計ができる自由度は高いですが、施工日数がかかり、工事費用も発生します。セットアップオフィスは内装、パーテーションなどの工事を完了させた物件のため、内装工事期間中の賃料がかからない他、入居後速やかに業務を開始できるメリットもあります。
居抜きオフィスの契約
居抜きオフィスは引っ越したテナントが使っていた内装や配線、家具などを、そのまま引き継いで借りられる事務所物件のことです。セットアップオフィスと同様に、内装工事の費用がかからず、デスクやチェア、家具などオフィス用品もそろっているため、設備費用も抑えられ、入居の初期費用を大幅に削減できます。引っ越し・入居に伴う労力や時間も省くことが可能です。
セットアップオフィスは賃料に内装工事費用がプラスされます。居抜きオフィスは以前の入居者の好みで、個性的なデザインもありますが、内装工事のプラス分はなく、基本の賃料で契約できるケースが多いため、よりコスト削減が可能です。
居抜きオフィス・セットアップオフィスと普通のオフィスの移転費用比較
普通のオフィスに比べ、居抜き・セットアップオフィスは、内装やオフィス家具を設置する費用、引っ越しにかかる労力や時間を節約できます。
普通のオフィスにおける平均内装工事費用は坪当たり25~40万円、什器購入費用は社員1人当たり5~30万円とされています。また、最適なオフィス面積は社員1人当たりに4坪です。
仮に従業員20名で80坪のオフィスに移転した場合、内装工事費用が坪当たり30万円、什器購入費用を社員1人当たり10万円とすると、合計2,600万円かかります。居抜き・セットアップオフィスはこの費用を節約することが可能です。また、退去する際の原状回復工事期間と、入居する際の内装工事期間で重複して発生する賃料をどちらも節約できます。
まとめ
オフィス移転では退去時の原状回復や、入居時の内装工事、備品購入など多額の費用がかかります。移転費用を抑える方法として移行期間の賃料二重払いを防ぐことが有効です。居抜きオフィスやセットアップオフィスなら、入居時の初期費用を抑え、退去時の原状回復費用も節約できます。Value Officeは居抜き・セットアップオフィスに特化した専門サイトで、豊富な物件の中から、条件に合った物件を探すことが可能なので、お困りの際はぜひご相談ください。