内装付きオフィス(セットアップオフィス)のメリットとは?

内装や造作があらかじめ整備され、オフィス什器が揃った状態で貸し出されるオフィスを内装付きオフィス、もしくはセットアップオフィスといいます。本記事では、内装付きオフィスの特徴やメリット・デメリット、居抜きオフィスとの違い、借りる際の注意点、内装付きオフィスが向いている企業について解説します。

内装付きオフィス(セットアップオフィス)とは

内装付きオフィス(セットアップオフィス)とは、すでに内装や造作が施された賃貸オフィスを指します。築年数が高く、入居率が低下したオフィスビルの空室に内装を施し、執務スペースや会議室、エントランス、間仕切りといった造作工事をすませた状態で貸し出されることが多いです。内装付きオフィスは、貸し手からすると入居率のアップが見込め、借り手にとっても短期入居が可能になるというメリットがあります。一般的な賃貸オフィスは基本的に室内に何も設置されていないまっさらな状態で引き渡されるため、入居後に内装工事が必要になりますが、内装付きオフィスでは最初から内装が完成しており、場合によってはデスクや椅子などの家具も備え付けられている点が特徴です。内装の設計や工事にかかる手間と時間、費用を節約できるオフィスの形態として注目を集めています。

内装付きオフィスを選ぶ5つのメリット

通常のオフィスを借りて自社で内装を整えていく場合と比べて、内装付きオフィスにはどのようなメリットが期待できるのでしょうか。ここからは内装付きオフィスを選ぶ5つのメリットについて解説します。

1.初期コストを削減できる

内装付きオフィスを選ぶ第一のメリットは、初期コストを軽減できる点です。通常、オフィスを借りる場合は内装工事が必要になり、そのための費用を要します。内装工事の内訳としては、パーティション・間仕切りの設置工事、床工事、壁工事、天井工事、電気やパソコン、LAN配線、電話、コピー機、空調設備の設置工事などが挙げられます。内装工事の坪単価は10万~20万円が相場とされており、こだわると30万円程度まで上がります。それに対し、内装付きオフィスならこれらの工事を行う必要がなく、家具も不足分だけを買い足せばよいため、イニシャルコストを大幅に抑えられます。

2.内装のレイアウトを考える手間が省ける

オフィスの新設や移転時には、従業員数や自社の業務などに合わせて内装を決めていく必要があります。通常の賃貸オフィスの場合、まずは物件選びをして、物件が決まった後は間仕切り、照明、配線といった内装を専門の施工業者と打ち合わせてから発注、施工と段階を踏んで準備を進めます。その過程では多くの時間と手間、コストを費やします。しかし、内装付きオフィスなら最初から内装が整っており、物件決めと併せて内装も決まるため、自分達でレイアウトを考える必要がありません。

3.素早く入居・退去することが可能

内装付きオフィスは、通常のオフィスに比べて入居や退去までの期間が短くすむのもメリットです。一般的にオフィスの内装工事では施工業者との打ち合わせや見積もり、値段交渉、発注、施工と全ての工程を終えるまでに2~3ヶ月かかります。それに対し、内装付きオフィスなら物件が決定した時点で内装が整備されているため、すぐに移転可能です。オフィスを退去する際もパーティションや什器を撤去・処分する必要がなく、壁紙や床板の張り替えやクリーニングのみですみます。このため、スピーディかつスムーズに退去可能です。

4.従業員のモチベーションが向上する

内装付きオフィスの多くは壁のデザインや照明にこだわり、かつ生産性にも考慮した内装になっていることがほとんどです。オシャレで使いやすいオフィスは、働く従業員のモチベーションにプラスの影響を与えたり、会社への帰属意識を高めたりする効果が期待できます。さらに、デザイン性に優れたオフィスは、採用活動にも有利に働きます。就活生にとって、働く環境は就職先を決める上でのひとつの選定基準です。オフィスがオシャレであれば、説明会や面接で会社を訪れた学生に好印象を与えられるほか、自社の魅力をアピールすることにつながるでしょう。

5.入居前の準備期間中に賃料が発生しない

内装付きオフィスを選べば、入居前の準備期間中に賃料が発生しません。一般的な賃貸オフィスは、物件の引き渡し日と賃料起算日が異なる場合があります。物件引き渡しから賃料起算日までの期間に準備が完了すれば問題ありませんが、間に合わない場合は準備期間中にも賃料が発生してしまう可能性があります。その点、内装付きオフィスなら契約後に必要最小限の準備だけですぐに入居できるため、無駄な賃料の発生を抑えられます。

内装付きオフィスの注意点

内装付きオフィスにはメリットだけでなく気を付けておくべきデメリットもあります。入居してから後悔しないために、内装付きオフィスを利用する上での注意点を知っておきましょう。

1.内装のない通常のオフィスよりは賃料が高くなりやすい

内装付きオフィスではオフィス家具や内装なども含まれた賃料となるため、賃料だけを比較すると、通常のオフィスの1.5倍程度と割高になりやすい点がデメリットです。賃料が高くなれば、どうしてもランニングコストも高くなってしまいます。この賃料は契約期間中であれば固定費としてかかり続けるため、10年、20年と長期的にオフィスを構えることを検討している企業にとっては不向きといえるかもしれません。しかし、短期での成長を見越し、時間をかけずにオフィスを開設・移転したいと考えているベンチャー企業などであれば、月単位の賃料が高いというデメリットはさほど気にする必要はないでしょう。

2. 造作物を後から変更しにくい

内装付きオフィスではすでに内装が完成しているため、入居後、大幅に間仕切り壁などの造作物を変更できません。「自由な働き方を取り入れるためにABWを採用したい」「他のチーム・社外の人ともコミュニケーションを取りやすい職場にしたい」など、自社が描く理想のオフィス像がある企業にとっては、内装の変更がしにくいのは難点です。ただし、レイアウトやデスク位置の変更は可能なため、既存の造作物を活かしつつ、変えられる部分を自社に合わせて変えていくのがおすすめです。

3.オリジナルのデザインは実現できない

内装付きオフィスのレイアウトはプロのデザイナーが担当しており、一般的にはどのようなテナントにも受け入れられやすいように設計されています。そのため、自社のコーポレートカラーを意識した内装デザインや部屋全体の色調など、オリジナリティを追求することは難しいでしょう。色調や内装に細かいこだわりがあったとしても、最適な条件の物件が見つかるとは限りません。また、業務内容に合わせて会議室を多く設ける、執務スペースを広く取るといった調整が自由にはできないため、自社のニーズに合致する物件を見つけるまでには時間がかかると考えておきましょう。

内装付きオフィスと居抜きオフィスの違い

内装付きオフィスと類似するオフィスの形態として、居抜きオフィスがあります。居抜きオフィスとは、前の借主が使っていた物件を内装や造作をそのままの状態で借りられるオフィスのことです。新しいオフィスの選択肢として居抜きオフィスも考えている方に向けて、両者の違いについて解説します。

什器や造作の引き継ぎ

内装付きオフィスと居抜きオフィスの主な違いは、什器や造作が引き継がれるかどうかという点にあります。まず内装付きオフィスでは、新たなテナントが入居する前にビルのオーナーがリニューアル工事を行うため、内装は新しく什器も新品です。ただし、賃料に工事費用などが含まれている分、ランニングコストが割高になりがちです。一方の居抜きオフィスでは、前の入居者が残した間仕切りや内装、什器などをそのまま引き継いで借りることになります。空調などの設備も用意されている場合がほとんどです。内装工事や設備導入の必要がない分、居抜きオフィスの方がコスト削減につながるメリットがあります。ただし、居抜きオフィスではレイアウトだけでなく機器や什器なども引き継ぐことになる点に注意が必要です。これらは中古品のためにすぐに壊れてしまう可能性があり、せっかくコストを抑えても追加で費用が発生する場合があることも頭に入れておきましょう。

原状回復工事義務の引き継ぎ

内装付きオフィスではプロのデザイナーがレイアウトを設計したオシャレなオフィスに入居できるのに対し、居抜きオフィスの場合は前に入居していた企業からそのままの状態でオフィスを引き継ぐことになります。したがって内装にはその企業のこだわりが反映されており、必ずしもオシャレであるとは限りません。
また、原状回復の方法にも違いがあります。内装付きオフィスでは、入居時に原状回復に関する契約を締結し、退去時にはその契約内容に基づいて原状回復を行います。造作に変更を加えた場合などは原状回復義務が生じますが、内装は原状回復の対象外とされる契約の場合は、財政的な負担を抑えることが可能です。
一方の居抜きオフィスの場合、前入居企業から原状回復義務を引き継ぐことになるたえめ、居抜き退去をしない限りは原状回復の費用が生じます。

内装付きオフィスを借りる際の注意点

内装付きオフィスを借りる際には、通常のオフィスを借りる場合とは多少事情が異なります。どのようなポイントに気を付ける必要があるのか押さえておきましょう。

自社の業務・働き方に合うオフィスか慎重に検討する

内装付きオフィスを選ぶ際は、自社の業務・働き方に合っているかを慎重に検討するべきです。内装付きオフィスはいわゆる出来合いですので、後から細かいレイアウトを変更することが難しくなります。入居後に自社の業務・働き方と内装がそぐわないと感じることがあるかもしれません。特に内装へのこだわりが強い企業であれば、一般的な賃貸オフィスを借りて自分達で内装のデザインを決めていく方が、かえって安くすみ、理想に近いオフィスを手に入れられる可能性が高いでしょう。特に近年は新型コロナウイルスの感染拡大によって働き方やオフィスの在り方も多様化しているため、改めて自社の業務や働き方を考え、その上で内装が適しているか検討することをおすすめします。

立地や築年数にもこだわる

内装付きオフィスを選ぶ際のチェックポイントとして、立地や築年数にも注目してください。築年数があまりにも古すぎる物件は、リフォームで内装が綺麗になっていても、空調などの設備が老朽化しているリスクがあります。従業員の働きやすさや生産性の向上を重視するのであれば、利便性の高い立地であるかどうかも重要です。ただし、内装付きオフィスは一般的な賃貸オフィスに比べると知名度は低く、現在はまだ物件数も限られており、立地は東京や大阪などの大都市が中心となります。東京であれば大手町や丸の内、日本橋、渋谷、新宿といった主要なビジネスエリアに内装付きオフィスが集中しているため、自社のビジネス戦略にあった土地を見極めましょう。

内装付きオフィスが向いている企業は?

最後に、どのような企業に内装付きオフィスが向いているのか改めて確認しておきましょう。内装付きオフィスは、内装工事や什器の用意などにかかる費用をオーナー側が負担しているため、初期費用を抑えて入居できる反面、一般的な賃貸オフィスと比べて賃料が高めです。そのため、短期間で再移転の可能性があり、移転に時間と手間をかけたくない企業に向いています。事業拡大による急な増員の可能性があるベンチャー企業などとの相性がいいほか、短期プロジェクトや移転までの仮利用にもおすすめです。初期費用を抑えて小規模に事業を始めたいスタートアップ企業や、フリーランスの方も内装付きオフィスという選択肢を検討する価値はあるでしょう。

まとめ

内装付きオフィスは、内装設備があらかじめ整っているため、移転の際にかかる手間や時間、初期費用などを抑えられるのが大きな特徴です。事業拡大の見込みが高く短期間での移転を検討しているベンチャー企業や、初めはあまりお金をかけずに小規模でビジネスを展開したいスタートアップ企業、または短期プロジェクトや移転に伴う仮利用などに向いています。スムーズなオフィスの移転を目指すのであれば、物件の紹介だけでなく、自社に最適なビジネス環境の構築や引越しの手配、現オフィスの退去計画まで、トータルで任せられるValue Officeを活用してみてはいかがでしょうか。