オフィス移転時のチェックリスト 基本的なスケジュールと必要な手続き

オフィスの移転時に何をすればよいのかわからない、移転手続きのチェックリストが欲しい、などのお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。移転には、長期間にわたる準備や多くの手続きが必要です。この記事では、オフィス移転時の手続きについてチェックリストを作成、解説しているので、ぜひ参考にしてください。

オフィス移転の手続きチェックリスト

オフィスを移転する際は、さまざまな手続きを行わなければなりません。ここでは、手続きの種類や流れを、各ステップに分けて紹介します。具体的なステップは以下のとおりです。

・移転に向けた事前準備
・現オフィスの手続き
・新オフィスの選定
・引っ越し業者・内装業者などの選定
・新オフィスの設計
・関係者への移転の連絡
・住所・連絡先変更の手続き
・社内への情報共有
・官庁関係への書類提出

各ステップやそれぞれに必要な手続き、書類などは、各企業の状況によって異なる場合があります。ここでまとめた手続きのチェックリストは、あくまでも例のひとつのため、手続きの詳細については、関係する企業や公的機関に個々で問い合わせるなどの確認が必要です。

移転に向けた事前準備

移転の際は、ひとつのプロジェクトとして計画を策定し、スケジュールを組むなど、早い時期からの充分な準備が必要です。

まずは、オフィス移転のプロジェクト担当者・責任者を選任し、プロジェクトチームを立ち上げましょう。移転に関わるあらゆる手続きは、主にプロジェクトチームのメンバーが進めます。

移転をスムーズに実現させるには、目的や課題を洗い出し、問題を解決するための移転方針を明確にすることが大切です。

【事前準備チェックリスト】
・プロジェクトチーム立ち上げ
・移転目的・課題の明確化
 目的・課題を洗い出して移転方針を決定
・移転予算の計算
 原状回復工事費用、新オフィス入居時費用など
・移転スケジュールの作成

現オフィスの手続き

移転が決まったあとは、現オフィスの退去手続きを行いましょう。

まず、賃貸借契約書で解約予告の期限を確認し、早めに解約通知書を発送します。解約予告は、タイミングが遅れると解約日が遅くなり、余分な賃料が発生するため注意が必要です。

また、物件契約時に支払った保証金や敷金などの預託金が返還される場合は、返還時期を確認しておきます。

原状回復の範囲については、貸主や管理会社と事前に打ち合わせを行って確認します。そのうえで、原状回復工事の見積もりを業者に依頼しましょう。

・現オフィスの賃貸借契約書確認
 解約予告期限の確認、解約通知書発送(基本的に退去6ヶ月前)、預託金(保証金)の返還時期確認
・物件の原状回復範囲・費用確認
 原状回復施工業者の選定、原状回復対象範囲、施工費用

新オフィスの選定

新オフィスは、これまでのオフィスで感じていた課題を解決する条件を整理したうえで、立地や物件、毎月かかるコストなどを踏まえて選びます。

具体的には、金融機関・役所・商業施設などの周辺施設の有無を確認したり、最寄り駅や路線の混雑状況などを調べたりする必要があります。企業住所によるブランディングを考慮することも大切です。

また、数ヶ月分の賃貸料が無料になる「フリーレントサービス」に対応している物件もあるため、交渉してみるのもよいでしょう。ほかにも、工事区分によって内装工事が制限されないか、消防設備工事が予定されていないか、などの確認も行います。

・立地の検討
 周辺施設の有無、最寄り駅や路線の混雑状況、ブランディング
・物件の検討
 駐車場、使用可能時間(夜間・休日)、エントランス、エレベーター、空調、電話回線、トイレ、給湯室など
・費用の確認
 賃貸料、敷金、共益費、預託金(保証金)、更新料、原状回復条件、その他費用
・交渉
 フリーレント交渉
・契約
 工事区分確認、消防設備工事の有無確認

引っ越し業者・内装業者などの選定

移転の際は、引っ越し業者、内装業者、電気工事業者、通信事業者など、さまざまな業者を選び、実際に移転する前に、工事や引っ越しの打ち合わせを行います。

これらの業者は、全体のスケジュールに大きく関わるため、それぞれの細かなタスクをしっかりと把握しなければなりません。

なお、引っ越し業者が対応できる作業内容によって、他の作業負担が変わります。どの業者がどこまで対応可能か、などを確認したうえでの比較検討が重要です。

・引っ越し業者の選定
 作業内容、対応可能範囲、費用
・内装業者の選定
 他業者と作業予定の調整、デザイン、イメージ、費用
・その他必要に応じた業者の選定
 インターネット通信、電気工事、OA機器、清掃など

新オフィスの設計

新オフィスが決まったら、デザインやレイアウトなどの設計を行います。

オフィスのデザイン・レイアウトは、社員の働きやすさにつながる重要な項目です。良質なデザイン・レイアウトであれば、社員の満足度がアップし、企業ブランディングの効果も期待できます。

現オフィスの課題を解決し、現代のワークスタイルに合うデザイン・レイアウトにするには、専門家の意見を取り入れることも大切です。

・スペース、部屋の検討
 執務室、会議室、応接室、休憩室、更衣室、収納スペース、エントランスなど
・動線の検討
 部署ごとの必要スペースを設定、業務動線の確保
・レイアウトプランの作成
 業務効率、コスト削減、ブランディングなどの目的に合わせ、専門家の意見を取り入れて作成
・什器の検討、発注
 レイアウトプランをもとに、机や椅子、棚などの検討、発注

関係者への移転の連絡

移転の際は、取引先はもちろん、警備会社、リース会社などに対して、移転の1ヶ月~2週間ほど前までには、確実にメールやハガキ(案内状)で連絡を行います。

金融機関に対しては、移転の3ヶ月ほど前に、変更内容を連絡するのがおすすめです。加入団体に対しては、届出が必要な時期を確認してから連絡を行います。

消耗品の購入先への連絡は、新オフィスで商品の受け取りができるようになったタイミングで、住所変更をする必要があります。

・取引先への連絡
 取引先企業以外にも、金融機関、会計士、警備会社、リース会社、加入団体など
・その他必要な関係先へ連絡
 定期購読雑誌、新聞、消耗品購入先など

住所・連絡先変更の手続き

企業の住所や連絡先が変更になる場合、まずは自社のWebサイト上で1~2ヶ月ほど前に移転のお知らせを掲載、移転後にWebサイト上の住所・連絡先を修正します。

また、社内外で利用するメールアドレスに設定している署名、SNSで表示されている住所・連絡先も修正します。

ほかにも、従業員の名刺や社員証、契約書、請求書、伝票、封筒、社判の住所や連絡先も修正する必要があります。移転したあとは、新しい住所が印刷されたものに切り替えるため、案内状などと一緒に早めに発注しておきましょう。

・Webサイトの修正
・メール署名、SNSの修正
・名刺の修正
・社員証の修正
・書類(契約書、請求書、伝票、封筒など)の修正
・社判、ゴム印の修正
・その他住所・連絡先を登録しているサービスでの変更手続き

社内への情報共有

従業員に移転計画を説明する社内告知は、移転が決定したら早めに行いましょう。移転の流れやスケジュールを社内で共有すれば、従業員全員が協力できる体制が整います。

スムーズな移転のためには、部署・個人単位で、社内物品の扱いを記したリストを早めに準備することも大切です。

引っ越しの当日は、新オフィスと現オフィス、どちらも作業人員が必要になります。それぞれの場所で、移転作業の役割分担をあらかじめ決めておくと、混乱が避けられるでしょう。

・移転に関する説明・情報共有
 社内説明会開催、アラートでの情報共有、荷物のまとめ方などのルール
・マニュアルの作成
 移転準備、スケジュール(1ヶ月ほど前)、物品の廃棄・残留・移転リスト
・作業確認
 当日の作業分担表(1週間ほど前)
・新オフィス・現オフィスの鍵の確認(受け渡し・回収)

官庁関係への書類提出

オフィスの移転時には、法務局、税務局、都道府県税事務所など、関係省庁に提出しなければならない書類があります。書類には提出期限があるものが多いため、余裕をもって準備しましょう。

・法務局
 移転前の管轄局へ「本店(支店)移転登記申請書」(移転日から2週間以内。支店は3週間以内)
・税務署
 「事業年度・納税地・その他の変更・異動届出書」(移転後速やかに)
 「給与支払事業所等の開設・移転・廃止届出書」(移転日から1ヶ月以内)
・都道府県税事務所
 「事業開始等申告書(法人設立・設置届出書)」(移転日から1ヶ月以内)
・公共職業安定所
 「雇用保険事業主事業所各種変更届」(移転日の翌日から10日以内)
・労働基準監督署
 「労働保険名称、所在地等変更届」(移転日の翌日から10日以内)
 「労働保険保険関係成立届」(保険関係が成立した日の翌日から10日以内)
 「労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書」(保険関係が成立した日の翌日から50日以内)
 「適用事業報告(様式23号の2)」(移転後遅滞なく)
 ※必要に応じて以下の書類を提出
 「就業規則(変更)届」
 「時間外労働・休日労働に関する協定届」
 「安全管理者選任報告」
 「衛生管理者選任報告」
 「産業医選任報告」
・郵便局
 「転居届」(移転決定後速やかに)
・年金事務所
 「適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」(移転日から5日以内)
・消防署
 「防火・防災管理者選任(解任)届出書」(移転後すぐ)

移転の負担を抑えるために検討したい2つのオフィスタイプ

オフィス移転に伴う手続きや作業は山ほどあります。移転の手間や費用などの負担を抑えたい場合には、居抜きやセットアップオフィスがおすすめです。

これらのオフィスタイプは、内装やインテリアなどがはじめから準備されているため、移転時のさまざまな負担を削減できるメリットがあります。

居抜きオフィス

通常のオフィスでは、退去時に原状回復を行う必要があります。また、入居時には内装工事を行い、空調などの設備やオフィス家具といった必要なものを、コストと時間をかけて準備しなければなりません。

それに対して、居抜きオフィスとは、前の借主が使っていた内装や家具などをそのまま引き継いで使用するオフィスのことです。すでに内装工事が完了した状態のため、工事費用が不要で、机や椅子などのオフィス家具もそのまま使えます。よって、移転時にかかる初期費用を大幅に削減することが可能です。

セットアップオフィス

セットアップオフィスとは、物件のオーナーが内装工事を行い、受付や会議室、オフィス家具などを備えて貸し出す形態の物件です。

業務を行うために必要な内装などがすでに整っている点では、居抜きオフィスと同じですが、セットアップオフィスでは、内装などの準備を前の借主ではなくオーナーが行っています。

居抜きオフィスは、基本的に前の借主である企業が業務を行いやすいデザイン・レイアウトで作られたものですが、セットアップオフィスは、多くの企業が使いやすいデザイン・レイアウトでできています。プロのデザイナーが関わったデザイン性・機能性の高いオフィスを使用できる点が特徴です。

居抜きオフィス・セットアップオフィスのメリット

居抜きオフィス・セットアップオフィスの利用には、オフィス移転時の時間短縮や費用の抑制といったメリットがあります。原状回復や内装工事の必要なオフィスとは異なり、工事が不要ですぐに使用できる賃貸システムのため、オフィスの移転時に生じるさまざまな負担を抑えることが可能です。

時間の短縮

通常のオフィスでは原状回復が行われるため、入居前に内装デザインのほか、受付や会議室などのレイアウトを考えて内装工事を行う時間が必要です。通常のオフィスの内装工事には、1~3ヶ月ほどかかるとされています。

居抜きオフィスやセットアップオフィスの場合、契約時にはすでに内装工事が終了している状態のため、入居までにかかる時間を1ヶ月以上短縮できます。移転に時間をかけられない場合や、内装工事に関わる手続きの手間を減らしたい場合に適しているでしょう。

費用の抑制

通常のオフィスは、内装や設備をすべて撤去したあとの状態で、引き渡しが行われます。オフィスとして使用するためには、内装や設備の工事、備品などの準備で、1坪あたり10万~30万円ほどの費用がかかるのが一般的です。

例えば、1坪20万円の場合、30坪で600万円の内装費用がかかるため、すでにオフィス家具まで準備されている居抜きオフィスや、セットアップオフィスを利用すると、オフィス移転時の初期費用をかなり削減できます。移転に大きな予算をかけられない場合に適しているでしょう。

まとめ

オフィスの移転時には、原状回復、内装工事、関係各所への連絡、官庁関係への書類提出など、さまざまな手続きを行わなければなりません。手続きが遅れるとトラブルに発展するケースもあります。

移転をスムーズに進めるには、オフィスの内装工事が不要な、居抜きオフィスやセットアップオフィスの利用がおすすめです。

Value Officeは、居抜きオフィス・セットアップオフィスのマッチングサイトです。初期費用や移転の手間を大幅に削減しながら、デザイン性・機能性に優れたオフィスの契約が可能です。物件の紹介だけでなく、現オフィスの退去計画や引っ越しの手配なども、ワンストップでプロデュースいたします。