SOHO物件とは? オフィス物件との違いやメリット・注意点

近年、SOHO(ソーホー)、SOHO物件という言葉をよく耳にするようになりました。SOHO物件を選ぶにあたっては、重要なポイントをしっかり押さえることが大切です。本記事では、SOHO物件とは、といった基礎知識やメリット・デメリット、向いている職種などを解説します。

そもそもSOHO(ソーホー)とは

SOHO(ソーホー)とは、何を指す言葉なのでしょうか。働き方、賃貸物件におけるそれぞれのSOHOの意味を理解しましょう。

働き方を意味する「SOHO」

SOHOとは、Small Office Home Officeの略称です。総務省は、SOHOについて「個人事業者・小規模事業者等が行うテレワーク」と位置付けたうえで、「主に専業性が高い仕事を行い、独立自営の度合いが高いもの」と説明しています。
(引用元:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/18028_01.html)
SOHOは広い意味で使われており、明確な定義はありません。
・個人事業主が小規模なオフィスあるいは事務所で仕事をする
・情報通信機器を活用し、企業から委託された仕事を在宅で行う
このようなワークスタイルがSOHOとされ、仕事・労働時間・労働形態などを自由に選べます。組織に属さない働き方ができる一方、あらゆる雑務を自分でこなす必要があり、責任もすべて負わなければなりません。
SOHOを選ぶならば、自由と表裏一体のデメリットを受け入れることが大切です。

賃貸物件における「SOHO」

賃貸物件における「SOHO」とは、SOHOで働くために使える小規模なオフィスや事務所のことです。SOHO物件は、事務所兼住居として使えます。
SOHOに適した仕様の物件もあれば、一般住宅の一部をSOHO用にした物件もあります。

SOHO物件とオフィス物件の違い

SOHO物件とオフィス物件では、契約形態や税金、制限事項などにさまざまな違いがあります。主な相違点を以下に示します。

 SOHO物件 オフィス物件
契約住居契約事務所契約
法人登記不要必要
賃料の消費税かからないかかる
表札・看板出せない出せる
業種制限あるない(一部あり)
経費計上一部可能可能

SOHOが住むことを前提とした住居契約であるのに対し、通常のオフィス物件は事務所契約になるため、賃料に消費税も課されます。SOHO物件では表札や看板だけでなく、郵便受けの表示にも制限がかかる場合があります。
自宅スペースと事務所スペースでの使用規範囲が明確に分かれているSOHO物件では、賃料や光熱費の一部を経費として計上可能です。

SOHO物件のメリット・デメリット

SOHO物件には、どのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。それぞれを勘案したうえで、デメリットについてはどのような対策をとるべきかを考慮しておくことが重要です。

メリット1. 初期費用を抑えられる

メリットのひとつは、初期費用を抑えられる点です。
オフィス物件を借りるには、以下のような費用がかかります。

・敷金
・礼金
・前家賃
・仲介手数料
・火災保険料
賃貸住宅の敷金の相場は、賃料の1~3か月分ほどです。オフィス物件の敷金(保証金)は高めに設定されており、相場は賃料の6か月~12か月分ほどです。前述のように、オフィス物件は月々の賃料に消費税がかかります。
上記の例以外にも、オフィス物件の場合は内装工事費やオフィス家具代なども必要です。退去の際には原状回復工事をしなければなりません。
SOHO物件の賃料はオフィス物件よりも安く設定されており、基本的に払うのは敷金と礼金だけです。大規模な内装工事、オフィス家具代も不要です。
特に、事業を始めて間もない時期は収益が上がらないこともあるでしょう。初期費用はなるべく抑えたほうがよいです。

メリット2. 自由な働き方ができる

SOHO物件では働き方の自由度が大きくなり、仕事・仕事場所を選べる、労働時間・仕事のペースを自由に設定できる、通勤が不要、オフィスで寝泊まりできる、といったメリットがあります。
SOHOでは、好きなことや趣味を仕事にしやすいという特徴があります。仕事の内容や量も自分で選択でき、場所もSOHO物件内に限りません。図書館や喫茶店など、気分に応じて好きな場所を選べます。
また、企業の固定場所勤務形態と異なり、労働時間も柔軟に設定できます。服装などの社内規定も厳しくする必要性は薄いでしょう。通勤には一定の負担やストレスがかかりますが、SOHO物件で働けば、小規模であるという特性から、そうしたストレスからも解放されやすいです。企業で働く場合の通勤時間を、仕事や休憩時間として使うのも自由です。通常オフィスでは、加入している保険や近隣住民への配慮などの観点から寝泊まりはできませんが、住居も兼ねているSOHO物件では可能です。健康面の改善や、パフォーマンスの向上が期待できます。

デメリット1. 間取りがビジネス向けでない場合がある

いくつもメリットがあるSOHO物件ですが、デメリットもあります。本来は住居用の物件をSOHOの場として選んだ場合、ビジネス向けの設計がされていない可能性が高いです。
以下の項目を確認しましょう。

・部屋がいくつかに分かれているか
・事務所スペースと自宅スペースを分離できるか
・防音仕様になっているか
・インターネット回線、電力容量がビジネス仕様になっているか
・電源コンセントの位置や数が足りるか いくら部屋が広くても、ワンルームしかないものは不向きです。来客があることも想定すると、自宅スペースがすぐに見えたり、生活感が窺えたりする間取りも望ましくありません。パーテーションなどで区切ることも可能ですが、壁で区切られているほうが使いやすいです。事務所スペースと自宅スペースを分離できない間取りは選択肢から外しましょう。
業種によっては、仕事中に音が出る場合があります。近隣住民から苦情が出ないように注意しましょう。
仕事をするうえで、インターネット・パソコンの使用は必須です。インターネット回線の選択に制約がある物件では、速度が遅かったり、光回線を選べなかったりするなどの問題が生じる恐れがあります。法人契約ができないプロバイダもあります。
また、仕事をするための電力容量が不十分だと、入居後に工事を行わなければなりません。電源コンセントについても、デスクを置く場所を想定して、位置や数に問題はないかを確認しましょう。

デメリット2. 仕事とプライベートの区別があいまいになる

SOHO物件で仕事をすると、仕事とプライベートの境界が不明確になりがちです。
通常、オフィスと家では意識が切り替わります。場所や環境、会う人が異なるからです。しかし、SOHO物件はオフィスと居宅が一体であるため、意識を切り替える必要があります。
労働時間だけでなく食事や休憩も自由ですが、時間が決まっていないと怠ける人もいます。一方で、会社で働くよりも収入が不安定になるため、焦ってキャパシティ以上に働いてしまい、体調を崩す人がいるかもしれません。
自己管理ができる人ならば問題ありませんが、できない人はモチベーションも体調も崩してしまいます。自由であることは、場合によってはデメリットになります。
意識的に仕事とプライベートを区別し、気分や思考を切り替えることが大切です。
公私の区別をつけて集中力を高めるために、以下の工夫や取り組みを心がけましょう。
・スケジュールを組んで労働時間や休憩を決める
・集中できる環境をつくる、もしくは移動する
スケジュールを作成して労働時間を明確にしたり、事務所スペースは仕事だけに集中できるレイアウトにしたりするとよいです。

SOHOに向いている職種・向いていない職種

SOHOに向いている職種もあれば、向いていない職種もあります。SOHOをするうえで、どのような職種・仕事が最適なのでしょうか。

SOHOはパソコンがあれば成り立つ仕事におすすめ

以下の職種には、SOHOが適しています。

・デザイナー
・Webデザイナー
・プログラマー
・エンジニア
・写真・動画の編集や加工
・データ入力
・編集者
・ライター
・税理士
・会計士
いずれの職業も基本的に個人作業が中心であり、パソコンひとつあれば、場所・時間を問わず仕事が可能です。
人と直接会わなくとも仕事に影響はなく、コミュニケーションをとる場合は非対面のやりとりで用事を済ませられます。メールやチャット、Web会議機能などを利用すればよいです。
顧客情報をはじめとする個人情報・機密情報を扱う場合には、細心の注意を払いましょう。セキュリティ対策は万全か、確認を怠らないことが大切です。

人の出入りが多い仕事には不向き

以下の職種は、SOHOに不向きです。

・飲食業
・販売業
・倉庫業
・営業職

上記でも示した通りSOHOという働き方は、パソコンを使った仕事に向いています。そのため、 不特定多数の人と直接コミュニケーションをとる仕事や、社名を前面に出して多くの人にアピール・宣伝したい業種も向きません。SOHO物件は事業主の自宅も兼ねるため、生活感が溢れた場所にビジネスの相手は招きにくいでしょう。
基本的に、SOHO物件に不特定多数の人が出入りするのは禁止されています。騒音なども迷惑になりますし、見知らぬ人が頻繁に出入りするのを目にして不安に思う近隣住民も多いでしょう。防犯上の問題や懸念も生じるはずです。
しかし、SOHO物件の中には、マッサージサロンやエステサロンのような接客・サービス業を許可するものもあります。どうしても接客・サービス業を望む場合は、条件に合う物件を探すとよいでしょう。
いずれの業種でも、近隣の住人が迷惑をかからないように気を配る必要があります。

SOHO物件を選ぶ際のポイント

SOHO物件を選ぶ際には、間取り・設備・予算の3つに着目しましょう。

間取り

SOHOに適さないのは、1Kなどのワンルームや、仕事とプライベートの空間を区切れない間取りです。一方で部屋の区切りが多すぎても、大きなサイズの家具を配置しにくく、使い勝手が悪いでしょう。
SOHOに使うならば、自宅スペースと事務所スペースを分けられる間取りがおすすめです。スペースが左右に分かれていたり、奥に個室があったりする間取りは、空間を区切りやすいです。ある程度の広さも必要なので、1R以上の物件から選びましょう。
玄関から事務所スペースまで直行できる間取りならば、来客があっても自宅スペースに影響はありません。トイレの場所も重要であり、事務所スペースと自宅スペースの中間にトイレがある間取りがよいです。ユニットバスタイプは避け、洗面所と分かれている個室タイプのトイレを選びましょう。
洗面所、浴室、脱衣所、台所などが事務所スペースと混在せず、自宅スペースとの境界が明確になっていると、プライバシーも守られます。

設備

間取りに加えて、インターネット環境の確認や家具選びも重要です。
インターネット回線の速度・安定性は業務のパフォーマンスに直結します。物件に備わっているインターネット回線やプロバイダに問題がないかを確かめて、仕事に影響が出ないようにしましょう。固定電話やプリンターも用意するとよいです。
SOHO物件では、基本的に家具の組み立て・運搬・レイアウトはすべて自分で行います。
そのため、オフィスに設置するデスク・椅子・棚などの家具は、組み立てやすさや重さに目を向けましょう。高額だったり、機能が多すぎたりするものも避け、シンプルかつ軽量のものを選ぶとよいです。
あらかじめ設備・家具の配置などを決めてから内覧をすると、スムーズに進められます。

予算

SOHOでは安定した収入を得ることは難しくなりますが、賃料の額は変わりません。収入が減った場合でも無理なく賃料を払い続けられる物件を選び、予算内におさめましょう。
立地や広さなどによって賃料は変わり、便利な場所ほど高くなります。東京都のSOHO物件の賃料は、ワンルームの場合は10~20万円ほどが相場です。
SOHO物件を掲載しているさまざまなサイトで、賃料やその他の条件を比較しましょう。敷金・礼金がない物件やフリーレントの物件などを探すのもよいかもしれません。

希望通りのSOHO物件で働けば、モチベーションも向上して仕事も捗るでしょう。個人事業・小規模事業者を問わず、規模は小さくとも事業に適した働き方ができるような物件を選ぶことが望まれます。

まとめ

SOHOは、個人事業主や小規模事業者が規模の小さなオフィスで業務を行う働き方であり、SOHOをするために利用可能なのが、SOHO物件です。
SOHO物件には、初期費用を抑え、自由な働き方ができるなどのメリットがあります。デメリットとして、ビジネス向けでない間取りがある、仕事とプライベートの区切りをつけにくい点が挙げられます。SOHO物件を選ぶ際は、間取り・設備・予算に目を向けましょう。
平米数や間取りの希望があるのに予算が足りない場合には、居抜き物件やセットアップオフィスがおすすめです。内装のレイアウトやオフィス家具がそろっているため、低コストで入居でき、事業も早く始められます。